四、大坂峠 〜女官 の手紙 には・・・〜

詳細大坂峠にさしかかったのは、すでに夜も深まった時刻でした。阿波から讃岐
へと入る古い街道は山越えの道。深い暗闇に続く大坂峠の曲がりくねった道を、少しでも早くと馬を急がせます。
その山中で、なんという偶然か、手紙を持った一人の男に出会いました。
われわれを四国に散らばっている平家の軍隊と勘違いしたようで、都の女官
の書状を持って、屋島の大臣に届けに行くと、あっさりと申します。その書状には、「九郎は、すすどき男にてさぶらふなれば、大風、大波もきらはず、寄せさぶらふらんとおぼえさぶらふ。勢ども散らさで、用心せさせたまへ」と書いてありました。義経さまは行動がすばやく、嵐などもろともせずにやってくる。兵をあちこちに散りばめずに、用心をして欲しいとの便りだったのです。
この便りが平氏に届けば、敵はすぐにも守りを固めます。この便りをここで手に入れることができたのは、大変な幸運。義経さまは、「これは天のご
男を山中の木に縛り付け、敵に気づかれぬうちにと、われわれは引田へとさらに急いで馬を走らせたのでした。
讃岐:現在の香川県
女官:宮中で使える女性