九、菊王丸 〜十八歳 の若武者 が〜

詳細敵方の
の
なかでも真っ先に進んだ佐藤三郎兵衛継信さまは、左の肩から右の脇へと射ぬかれ、馬からまっさかさまにどっと落ちてしまいました。
すると、能登守の家来の菊王丸と申すものが、継信さまの首を取ろうと走りかかってきたのです。もちろん、弟の四郎兵衛忠信さまは、兄上の首を取られまいと、弓を引き絞ったのでした。
放った矢は、見事に腹巻の合わせ目を射抜き、菊王丸は四つんばいに倒れます。今度は、能登守があわてて船から飛び降り、左の手に弓を持ったまま、右手に菊王丸を抱きかかえ船に投げ込みました。菊王丸はまだ十八歳、能登守はかわいそうに思い、その後は戦いもせず嘆き悲しんだとのことでした。
その悲劇は、わが軍も同じこと。同じ頃に、陸では義経さまも、嘆き悲しんでおられたのでした。
奥州:現在の福島・宮城・岩手・青森の四県と、秋田県の一部