十五、弓流 し 〜命 がけで拾 ったもの〜

詳細悪七兵衛景清の声に持ち直した平氏は、「悪七兵衛を討たすではない。ものども続け」とばかりに、二百余人が渚に上がり、盾をぎっしりと並べて、「かかって来い」とおびき寄せるのでした。
義経さまはこれを見て、「こしゃくなことよ」とおっしゃり、後藤兵衛父子どの、金子兄弟どのを先に立てて、奥州の佐藤四郎兵衛どの、伊勢三郎どのを弓手、馬手に見立て、田代の冠者どのを後ろに立て、八十余騎で駆け出せば、平氏の兵は馬には乗らず、みなさっさと船に乗り込んだのでした。そこで、並べてあった盾は、ばらばらに蹴散らしました。わが軍は、勝ちに乗じて、馬の腹まで海に入れて攻め戦いました。
義経さまも海に入り戦っていううちに、船のうちから熊手を持って義経さまの甲のしころに、二度三度、ひっかけようとするものがおります。見方の兵が太刀や長刀で振り払おうとしましたが、義経さまの弓がひっかかり落とされてしまいました。
義経さまがかがみこんで取ろうしますので、見方から「うち捨ててください」との声がありましたが、義経さまはその声は聞かず、危ない思いをしてとうとう弓を拾って帰って来られました。
「たとえどんなに高価な武具であろうとも、義経さまのお命をかけてはなりません」と申し上げる方がいらっしゃいましたが、義経さまは「弓が惜しくて拾ったのではない。二人がかりで張ったり、三人がかりで張ったりする叔父の
屋島合戦の謎 その10